鍼灸学生時代、東洋医学概論の先生は学校の先生の中では
“ちょっと面倒くさい先生““マニアックな先生“という部類に
属していたかと思います。苦笑
まぁ、とにかく授業内容が細かかった。
ただその細かさには信念や東洋医学を構築した先人達への敬意が感じられたので
凄いなと思っていましたし、私は結構好きでした。
そんな先生が
「ツボ名の漢字が難しくて見慣れない
今使われていない古字(旧字)でも
勝手に新字体に変えてはいけない。昔の人が考え悩み
後世にそのツボの意味と由来を伝える為にこの漢字を選んだのだから。
そこにどれだけの本来の意味を込めたのかを
きちんと理解しなければならないのだよ」
とお話して下さったことを、とてもよく覚えています。
(テストで漢字が少しでも間違っていたら容赦なく×だったので覚えているのかな…笑)
そもそも中国の医学ですから漢字は沢山出てきます。
例えば睛明(せいめい)というツボ。(眼精疲労、目の不調に使う)
晴明と載っていたりしますが、睛明です。
睛と晴は漢字の意味が変わります。睛は瞳の意味を持ちます。
明るく見えるようにするツボという意味なので睛を使うべきなのだと思います。
画竜点睛の睛ですね。(竜の絵に瞳を入れて仕上げる)
また、列缺(れっけつ)というツボも列欠と書かれている場合が多いですが
列缺です。(列缺は肺経に属しているので呼吸器疾患や喉の痛みに使われたりします)
列は分裂、分かれるという意味で、欠は“足りない“という意味ですが
“欠“では“れっけつ“のツボの本来の意味と由来が表現しきれないのではと思います。
(ここからは鍼灸師以外の方には少し難しい話かもしれませんが)
◎列缺は、沢山のツボの中で四総穴(しそうけつ)といって
“特に効果のあるツボ4穴“に選ばれています。
身体を4部位(腹・腰背・顔面・頭項)に分けて治療するときに使う経穴で
列缺は頭項(頭や後頚部)の治療に効果的と言われています。
◎列缺は八総穴(はっそうけつ)にも選ばれています。
上肢と下肢の経穴を組み合わせて使うことで
不調に対応出来ると言われています。
列缺は足にある照海(しょうかい)というツボとセットで治療します。
※任脈を代表するツボなので生殖器系の症状に効果的。
(実際はこんなに単純な治療方法ではないのですが…それはひとまずおいといて)
これは私の想像なのですが
列缺は他の経絡と繋がる重要なツボで色んな症状に有効なツボです。
列缺単体だけでなく他のツボとタッグを組むことで
非常に効果を発揮するツボですし
足らないという意味の【欠】【缺】どちらの漢字にしようかと思った時に
不在。空席。空けるという意味合いもある【缺】を選んだのではないかなと。
様々な症状に効果を発揮するツボで忙しいので“席を空けている状態“
をイメージしたのかな。とか。
いや、もしかしたら単純に
橈骨茎状突起の上の骨のくぼみ(欠けている所)にあるツボだから
漢字は別に欠でも缺でも良かったのかも知れないけれど(笑)
漢字から読み解く意味と由来。
たかがツボ名ですが、先人達がどんな意味と思いをこめたのか
どんな由来があるのかを考えてみなさいと
学生時代そう伝えてくれた先生に出会えたことは
とても有難かったなと思っています。
写真は書道家の先生が開業祝いに書いて下さった作品で
大きな作品ですが開業からずっと飾っています。
【宙】infinity…∞限りの無いこと